あるプロの通訳の方が「英語は質よりも量」だとおっしゃっていました。「英語力」は「どれだけ英語に触れたか」がものを言うようです。
ですが、日本で生活していると、特別な環境にいない限り、英語に触れる機会がほとんどありません。そんな中で、最も手っ取り早く、かつ確実に英語に触れる機会を増やすことができる方法として、本を読むことが挙げられます。
とは言え、膨大な数の本があるので、「いったいどの本を読めばいいのか…」と途方に暮れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
高すぎるレベルの本を読んでも、なんとなくという程度でしか身に付きませんし、あまりに簡単すぎても得られるものがなく、物足りませんよね。
おすすめは「少し簡単」なレベルから読み始めて、徐々にレベルを上げていく方法です。簡単なレベルであっても習得が漏れている部分はあるでしょうし、少し簡単なほうがスラスラと気持ちよく読めて自信につながるからです。
そのような方法にぴったりなのが、レベル別に設定されたリーダーです。
この記事では、子供向けに作られた英語のレベル別リーダーのうち、実際に使ってお勧めしたいと思う4つのシリーズを紹介します。これらのリーダーは、気軽に利用できる豊富なリソースも提供されているので、活用しやすく、学習の幅も広がります。
リソースについては、改めて別の記事でご紹介します。
目次
Ladybird Readers
出版元は、イギリスのロンドンを拠点とし、児童書を中心に出版しているPenguin Books社(ペンギン・ランダムハウス社グループ)。
※旧Ladybird Books社
特徴
- 英語を母国語としない子ども向け
- 音声が無料で提供されている 🇬🇧 🇺🇸 ※イギリス発音とアメリカ発音の両方
- アクティビティブックが付属
- ケンブリッジ英検(YLE)に対応したレベル設定
(ケンブリッジ英検対策用の練習問題が付いた本もある) - 8段階のレベル設定
- フォニックスに特化したレベル(Starterレベル)がある
- イギリスにゆかりのある物語が多い
- ノンフィクションのほとんどがBBC Earthのもの
レベル
Ladybird Readersのレベル設定
目安の学年 (年齢) | ページ数 (単語数) | ケンブリッジ 英検 | 収載本の例 | |
Beginner | 年少児~ (トーマス:3~5歳、その他:5~7歳) | 16/ トーマスのみ24 (25~50語) | 該当なし (トーマスのみ Pre-A1 Starters) | きかんしゃトーマス、こひつじのティミー、Spot(コロちゃん) |
Starter | 年中児~ (4~7歳) | 32 (50~100語) | 該当なし | フォニックスに特化、Activity Book付き |
Level 1 | 年長児~ (5~7歳) | 48 (100~200語) | Pre-A1 Starters | ピーターラビット、ペッパピッグ |
Level 2 | 小学校1年生 (6~7歳) | 48 (200~300語) | A1 Movers | マーシャとくま、ムーミン、BBC Earth |
Level 3 | 小学校2年生 (7~8歳) | 64 (300~600語) | A1 Movers | ロアルド・ダール、おとぎ話、BBC Earth |
Level 4 | 小学校3年生 (8~10歳) | 64 (600~900語) | A2 Flyers | マイリトルポニー、おとぎ話、BBC Earth |
Level 5 | 小学校3~4年生 (8~10歳) | 64 (900~1500語) | A2 Flyers / KET | ガリバー旅行記、ピーター・パン、宝島 |
Level 6 | 小学校4年生 (9~10歳) | 64 (1500~2000語) | A2 Flyers / KET | オリバー・ツイスト、秘密の花園 |
※ 左端の列の各レベルをクリックすると、リーダー一覧とそれぞれの本の簡単な説明が表示されます。
ステップアップの流れ
Beginner~Level 1
アルファベットと発音を結びつけることができ、持っている知識でお話の大まかな内容を理解できるレベル。まだ挿絵や単語の見た目から意味を推測している段階。
Beginner 初めて使う会話フレーズを紹介
Starter それぞれの本にフォニックスに重点を置いた単語のコーナー(Look at the Story)と、サイトワードに重点を置いた完全文(フルセンテンス)のコーナー(Read the Story)を収載
Level 1 節が2つ以下の短い文で、現在形と簡単な形容詞を使用
Level 2~3
身近な単語であれば何を指しているのかわかり、短いフレーズであればしっかりとした発音で読めるレベル。
Level 2 節が2つ以下の短い文で、過去形と簡単な副詞が登場
Level 3 最大3つの節を持つ文からなる長い文章で、未来の意味の表現、比較級、短縮、関係詞節が登場
Level 4
一人で本を読むことができ、読む本を自分で選べるレベル。
Level 4 最大3つの節を持つ文からなる長い文章で、より複雑な構造の過去時制・未来時制、法助動詞※、多様な接続詞を使用
※ 法助動詞 = may、can、mustなど
Level 5~6
本文だけで情報を分類でき、ストーリーを自分の言葉で説明したり、要約したりできる。出来事を予測でき、登場人物やその背景を理解できるレベル。
Level 5 最大3つの節を持つ文からなる長い文章で、より複雑な構造の過去時制・未来時制、法助動詞、多様な副詞と代名詞を使用
Level 6 最大4つの節を持つ文からなる長い文章で、より複雑な構造の過去時制・未来時制、受動態、時を表す副詞節※(when~、after~など)を使用
※ Time clauses
Step Into Reading
世界最大の出版社であるアメリカのペンギン・ランダムハウス(Penguin Random House)社によるレベル別リーダー。
※旧ランダムハウス社
※楽天リンク画像
特徴
- 英語を母国語とする子ども向け
- 出版冊数が多い(下表参照)
- 幅広い分野とテーマ(小説、歴史、伝記、自然科学、おとぎ話など多種多様)
- 5段階のレベル設定
- ディズニーのようなアメリカにちなんだ本が多い
- Step 1と2にフォニックスを目的としたフォニックスリーダーが含まれる
Step Into Readingの冊数
フィクション | ノンフィクション | |
Step 1 | 194冊 | 9冊 |
Step 2 | 237冊 | 22冊 |
Step 3 | 83冊 | 52冊 |
Step 4 | 15冊 | 22冊 |
Step 5 | 1冊 | 8冊 |
ステップが上がるほどフィクションの割合が減り、ノンフィクションの割合が増えます。特にStep 4とStep 5は素晴らしい内容の本が揃っていると評判です。
レベル
Step Into Readingのレベル設定
推奨年齢 | ページ数 (およその単語数) | F&P レベル | 収載本の例 | |
Step 1 | 4~6歳 | 32 (50~200語) | C~J | いぬのロケット、Berenstain Bears |
Step 2 | 4~6歳 | 32 (200~400語) | E~J (一部 L) | リチャード・スカーリー、歴史 |
Step 3 | 5~8歳 | 48 (400~1200語) | I~N (一部 R) | ドクター・スース、伝記 |
Step 4 | 5~9歳 | 48 (1200~2500語) | L~P (一部 S) | 小説、伝記、歴史、童話、科学 |
Step 5 | 7~9歳 | 48 (2500~4500語) | N~R | 歴史、科学、スポーツ |
※ 左端の列の各レベルをクリックすると、リーダー一覧とそれぞれの本の簡単な説明が表示されます。
この表には、読解レベルの目安としてアメリカでよく使用されるF&P Text Levelも掲載しました。
F&P Text Levelは、「Guided Reading Level」、「F&P Reading Level」などと表記されることもあり、本の裏表紙などに表示されています。このほかにも様々な指標がありますので、あくまでも目安の一つとしてご参考にしてください。
このサイトでは、レベルをより細分化するためと、複数の出版社間で本のレベルを比較するためにF&P Text Levelを用いています。
ステップアップの流れ
Ready to Read(アルファベットを知っている幼児向け)
1~2音節の短い単語からなる文
Reading with Help(年少児~小学校1年生向け)
短い文からなる極めてシンプルな物語
Reading on Your Own(一人で読み始めるようになってきた小学校1~3年生向け)
短い文、やや難しい語彙、ステップ2よりも高度な概念
Reading Paragraphs(シンプルな文章なら一人で読める小学校2~3年生向け)
短い段落、難しい語彙、プロットのあるストーリー
Ready for Chapters(そろそろ絵本から卒業できそうな小学校2~4年生向け)
長い段落、より難しい語彙、いくつもの章からなる物語
Scholastic Reader
出版元は、アメリカの大手出版会社のScholastic社。児童書分野に強く、ハリー・ポッターシリーズの版権も有しています。
※楽天リンク画像
特徴
- 英語を母国語とする子ども向け
- アメリカにちなんだ本が多い
- 4段階のレベル設定
- ポケットモンスターのような有名なシリーズのものが多い
- 取り扱う分野が幅広い
レベル
Scholastic Readerのレベル設定
目安の学年 (年齢) | ページ数 (単語数) | F&Pレベル | 収載本の例 | |
Level 1 | 年中児~小学校1年生 (4~7歳) | 32 (30~100語) | A~I (実際はE~K) | I Spy、赤い子犬のクリフォード |
Level 2 | 年長児~小学校2年生 (5~8歳) | 32 (50~250語) | E~N (実際はG~I、K~N、Q) | ポケモン、Fly Guy、マジック・スクール・バス、 |
Level 3 | 小学校1~4年生 (6~10歳) | 48 (250~750語) | J~Q (実際はJ~L、N~P) | ポップルトン、童話、伝記 |
Level 4 | 小学校2~4年生 (7~10歳) | 48 (700~1500語) | M~T (実際はP~Q) | 伝記、自然科学 |
※ 以前のレベル設定はPre 1、1、2、3
※ 括弧内のF&P Text Levelは実際に収載されているリーダーのレベルです。
設定上は、Level 1はA~I、Level 2はE~N、Level 3はJ~Q、Level 4はM~Tに相当。
※ 左端の列の各レベルをクリックすると、リーダー一覧とそれぞれの本の簡単な説明が表示されます。
ステップアップの流れ
アルファベット、最初の単語
サイトワード、発音を目的とした単語、シンプルな文
新規の語彙、長い文
知識やインスピレーションが得られるような本
Oxford Reading Tree
イギリスのオックスフォード大学出版局(Oxford University Press社)によるレベル別リーダー。
特徴
- 英語を母国語とする子ども向け
- Biff、Chip、Kipperの3兄弟とその身近な人物を中心とした物語のシリーズ(コアストーリー)が人気
※Oxford Reading Tree(ORT)といえば、このコアストーリーを単独で指すことも多い。 - イギリスの大部分の小学校で国語の教科書として使われており、お手本となるようなイギリス英語が学べる
- 教科書=つまらないものというイメージを覆すために作られており、面白い
- 朗読の音声を利用できる(CD、無料ストリーミング、Oxford Reading Club) 🇬🇧 🇺🇸
- 登場人物が家族や友人といった身近な人物であり、日常の生活に基づくストーリーで始まるので、小さな子どもでも親しみやすい
- レベル分けがとても細かい
- シリーズを通して登場人物が一貫しており、新しい本のたびに覚え直さなくてよい
- Stage 5でマジックキーが登場してからは、ストーリーがつながるように順番に読むのがおすすめ
レベル
Oxford Reading Treeのレベル設定
推奨年齢 | 単語数 (ページ数) | 対応する F&Pレベル*1) | 補足 | |
Stage 1 (レベル1) | 年少児 3~4歳 | 0~35語 (8) | – | 文字のない本が多いので飛ばしてもよい |
Stage 1+ (レベル1+) | 年中児 4~5歳 | 16~74語 (12~16) | A | このレベルから始めるのがおすすめ |
Stage 2 (レベル2) | 34~108語 (20) | B | ||
Stage 3 (レベル3) | 67~143語 (20) | C, D | ||
Stage 4 (レベル4) | 年中~年長児 4~6歳 | 85~220語 (20~28) | D, E, F | |
Stage 5 (レベル5) | 5~6歳 | 273~406語 (28) | F, G, H | マジックキーによる冒険物語が始まる |
Stage 6 (レベル6) | 443~738語 (28~36) | I | ||
Stage 7 (レベル7) | 854~1068語 (36) | I, J | ||
Stage 8 (レベル8) | 6~7歳 | 878~1338語 (36) | J, K | |
Stage 9 (レベル9) | 6~8歳 | 1280~1516語 (36) | K, L | コアストーリーはこのレベルまで |
Stage 10 (レベル10) | – | M, N, O | Stage 9を終えた後にTree Topsシリーズなどに移行してもよい | |
Stage 11 (レベル11) | P, Q | |||
Stage 12 (レベル12) | R | |||
Stage 13 (レベル13) | 7~8歳 | |||
Stage 14 (レベル14) | 7~9歳 | S | ||
Stage 15 (レベル15) | 8~9歳 | T | ||
Stage 16 (レベル16) | 8~10歳 | U |
※ Stage番号とオックスフォードレベルの番号は同じです(レベル20まであります)。
上記の表の「対応するF&Pレベル」は、アメリカの出版社のリーダーのうち、同じレベルのものを探す際の参考として記載しました。
なお、Oxford LevelとF&P Text Levelは、レベルの設定基準が異なるため、また、出版社が用いる基準は複数あるため、あくまでも目安のひとつとしてご参照ください。
ステップアップの流れ(オックスフォードレベル)
※ Oxford Reading Treeのコアストーリーがあるレベル9までを記載
レベル1 アルファベットと簡単な単語を知っている子ども向け
絵が物語を語る、文字のない本もあります。絵を見ながら会話をしつつ、本の持ち方やページのめくり方も学べます。
レベル1+ 単語を読もうとし始めた子ども向け
単純なフォニックスが使われています。
この段階では、大人の手助けが必要な場合もありますが、文字と音の知識を使って新しい単語を読めるようになります。文章はまだ短くて簡単なものが多く、子どもが読むことに慣れるにつれて、ストーリーはごくわずかずつ複雑になっていきます。
このレベルでは、「ch」「ee」「oa」などの二重音字(2文字で1音になるもの)を持つ単語のような少し複雑な単語を読むのにフォニックスを使えるようになります。また、あまり馴染みのない単語も、フォニックスの知識を使って読み解くことができるようになります。
フォニックスの知識に基づいてただちに単語を理解でき、一般に引っ掛かりやすい単語(said、someなど)も目で見て分かるようになります。また、物語やノンフィクションの文章について、自信を持って意見を述べられるようになります。
このレベルまでに、同じ音をなす他のスペリングがあることを覚えます(例えば、「ou」という文字は「ow」または「oo」のように発音できる)。「didn’t」や「wasn’t」など、アポストロフィを使った省略が含まれていることがあり、また、「bad」の代わりに「terrible」など、語彙を増やす単語も紹介されます。
このレベルでは、ストーリーが長く、複雑になってきます。子どもは自分の読みを自分で訂正できるようになり、発音しなくても多くの単語が自動的に分かるようになっています。同じ音をなす他のスペリング(「igh」の音は「ie」「y」「i」と同じ)をもっと知っているかもしれません。
ほとんどの子どもが声に出して流暢に読み上げられるようになり、文章の中から質問の答えを見つけられるようになります。「beautiful」「eye」「any」といった珍しいフォニックスの単語にも慣れてきます。いくつもの音節を持つ単語もよく使われます。
このレベルでは、子どもが読解に自信を持つようになり、解読しにくく引っ掛かりやすい単語はほとんど知っています。レベル8の物語は、章立てになっていることが多いです。子どもは、読む本を選ぶのを楽しむようになり、その判断材料として、抜粋された本文の一部を読むこともあります。
レベル9になると、黙読または声に出してほとんどの単語を自然と読めるようになっています。ノンフィクションでは、索引、見出し、写真のキャプションなどを使って情報を探すことができるようになります。
コアストーリーだけでなく、オックスフォード・リーディング・ツリーの全てのシリーズとレベルについては、こちらにまとめています。
4シリーズのレベル比較
4シリーズ間で対応するレベルの一覧表はこちらに掲載しました。
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